遺産分割協議書について形式的な決まりはありません。口頭でも有効ですし、書面に残す場合でも実印を押印しなければならないとする決まりがあるわけでもありません。しかしながら、その協議に基づき何らかの手続きをする場合、ほとんどの場合実印の押印と印鑑証明書の添付を求められるはずですし、不動産の相続登記をする場合は必ず必要となります。
K様のお姉さまが不動産を遺されてお亡くなりになりました。お姉さまは生涯独身でお子様がいなかったので、相続人はK様他2名の3人の姉妹でした。その不動産については長女が相続することで協議がまとまり、遺産分割協議書を作成、それぞれが実印を押印し、全員の印鑑証明書も一緒に綴って保管しておりました。相続登記の申請はそのうちやればよいとの判断の元、10年以上放っておいてしまったそうです。ところが最近、不動産を相続した長女も亡くなってしまったのです。手元に残っているのは10年以上前に作成した遺産分割協議書と、現在では書式がだいぶ変わっている当時の印鑑証明書だけです。もし相続登記に必要な印鑑証明書に有効期限があるとすると、最早長女の印鑑証明を再度取得することは出来ません。
相続登記に必要な戸籍謄本等に有効期限が無いように、遺産分割協議書に添付する印鑑証明書にも有効期限はありません。戸籍の過去の記載事項に変更が無いように、遺産分割協議成立時に登録していた実印という事実も変更が無いためです。また、本事例は長女が単独相続しておりながらその旨の相続登記をしなかった事例なので、長女への名義変更は省略して直接長女の相続人(K様ともう一人の姉妹)への書き換えが可能なパターンです。そのため登記申請に記載する原因日付は10年ほど前に長女が相続した旨と、今回の相続の日付の二つを記載することになります。